海街diary 1 蝉時雨のやむ頃 吉田秋生

 男の部屋で朝を迎えた三姉妹の次女・佳乃(よしの)に父の訃報(ふほう)が届いた。母との離婚で長い間会っていない父の死に、なんの感慨もわかない佳乃は…。鎌倉(かまくら)を舞台に家族の「絆(きずな)」を描いた限りなく切なく、限りなく優しい吉田秋生の新シリーズ!!

舞台は鎌倉。鎌倉、いいなあ。吉田秋生は街を、暮らしを描くのが上手だな。最初のエピソード、といったらいいのかな、父の葬儀編がとても良かった。長い間会っていない父への感情の無さとか、再婚した先の家の人々であるとか、「そこに暮らす日々」というものを丁寧に描いているように思う。三姉妹が主人公の連作短編オムニバスという形式になっていて、これは「櫻の園」なんかと同じような形式だね。3話目の、4人目の主人公となるすずの生活を描いたものも良かった。人の痛みと、人の痛みを感受できる人間の情緒があった。吉田秋生はマンガがうまい。ただうまいのみならず、読み手によってさらに幅が広がるドラマを作って送り出している。やっぱりこのレベルの作家っていうのは、そうそういないものだなあと改めて感じた。街の絵もうまいし、コマ単位でじっくり見とれてしまうところ多々あり。B+