藤子不二雄物語 ハムサラダくん完全版 上下巻(完結) 吉田忠

出版社/著者からの内容紹介
ゆくぞ! どこまでも!
ハムくん(藤本弘)とサラダくん(安孫子素雄)が歩む「まんが道」!
77年~80年代初期、コロコロコミック黄金期に連載された伝説の人気マンガ!
藤子スタジオ第一アシスタントであった吉田忠が描いたもうひとつの「まんが
道」。
上下全2巻初の完全版!!
■帯文/藤子不二雄A
まんが道」一直線のハムサラダくん、夢にかける2人組のがんばりを応援して!
■ロングインタビュー&作品リスト/藤子不二雄ファンサークル ネオ・ユートピア

いや、すごい。面白かった。圧縮版まんが道的な、しかし全然違うといえば違うとも言える。ギャグやノリのベタさや少しばかりの下品さが、流石ものすごくコロコロ的である。70年代コロコロに連載されていたようで、80年代からコロコロ読者になった僕は読んだことのない作品だった。藤子不二雄がモデルであって、資料としての本家『まんが道』が大傑作のメジャー作品として既にある以上、比較されるのは仕方がないところだと思うのだけど、この『ハムサラダくん』のタッチやノリはけっこう新鮮だった。コロコロ的なムードも懐かしく、最後まで楽しんで読めた。前半のクライマックスの宝塚に手塚治虫に会いに行く話とか、後半のクライマックスの富山で締め切り破って原稿落としまくるエピソードはめちゃくちゃ盛り上がるなあ。この作品の作者の吉田忠から見た手塚治虫というのはこういうふうに描かれるのか、と印象深かった。A先生はまさにもう「ゴッドそのもの」な描き方でしたからねえ。

もっとも、色んなエピソードが本家とだいぶ違うものになってしまっているし、『まんが道』はあれだけ長い作品なので読み応えや一つ一つのエピソードの濃厚さについては、どうしてもこちらは見劣りする。「藤子不二雄物語」と銘打って発売している以上、作者がどう言おうともそういう面からの評価はやむを得ないものだと思う。それを抜きにして読むと、新鮮かつなかなかパワフルで楽しめた。B+