県庁の星 テレビ放送鑑賞

織田裕二柴咲コウを用いた庶民系ちょい社会派映画で、手堅く仕上がっているなと思った。織田裕二の場合、エリート公務員もエリートサラリーマンもわりと似たような雰囲気になるような気もする。キムタクが何やってもエッセンスがキムタクであるように、織田裕二も色んな役の非常に良くできたコスプレみたいな感じ。もっとも織田さんの場合、大きく分けて「陽気系織田裕二」と「陰気系織田裕二」の2通りのスタイルがあるようで、本作は俄然後者の織田裕二であった。かつての織田裕二主演の名作「お金がない!」は前者と後者が7対3あるいは8対2くらいのブレンドで、若い織田裕二の魅力が存分に発揮されたものだったと思う。「卒業旅行〜ニホンから来ました〜」はほぼ100パーセント陽気系、「振り返れば奴がいる」は100パーセント陰気系かな。最近、山本高広さんが織田裕二モノマネでブレイクしつつあるけど、モノマネしやすいというのは元のキャラクターが非常に特徴的である、色々な役柄をやっても大きな枠内での共通項があって、それを抽出しやすいということなんですねえ。

スーパーを舞台にした映画はあと「スーパーの女」ってのがあったなあ、と思いつつ鑑賞。柴咲コウさんというのも、非常に使い勝手がいい役者さんなんだろうな。友人の公務員佐々木蔵之介や、スーパーの店長・副店長、そして弁当Bチームのオダギリジョーなど、キャスト配置がとても良い。

クライマックスのカタルシスが、その後のエンディングでザクっとまた裏切られてしまうのはなるほど「現実的」であるけど映画の爽快感がかなり無くなってしまった。そこはもうちょっと、希望を持たせて欲しかったなあ。「○○○○○○ ○○○円」の張り紙がそこに繋がるわけだけど、うーん。まあ、どうするのがベストかというのは、人生もそうですけども選択がとても難しいところですね。

柴咲コウ演じる二宮あきの弟についてはあれくらいの描写で終わってしまって、別に何か改善されるわけでもなかったんだけど、そうなると彼が出てくる必然性がいまいちよくわからず、これも「うーん」となる。両親が亡くなって1人暮らし、という設定でも大丈夫だったのではと。あとフライを揚げ直すくだりは、2008年現在船場吉兆で激震の走った飲食業界のこともあり、2006年公開の映画でも非常にタイムリーですなあ。B+