エマ 9巻 森薫

エマ 9巻 (BEAM COMIX)
エマ 9巻 (BEAM COMIX)森 薫

エンターブレイン 2007-09-25
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内容紹介
本篇よりも高密度のおもしろさ!
好評「番外篇」シリーズ!
『エマ』に登場してきたサブキャラクターたちを主人公に、
19世紀イギリスの風俗・文化を描き上げていく「番外篇」シリーズ。
第9巻ではエマの新主人メルダース一家のメンバーを中心に、
6つのエピソードを短篇~中篇、読み切り形式で描いていきます。

番外編スペシャルみたいな第9巻。
全部もれなく面白かった。エマの世界、舞台設定を借りてはいるが、エマは全然出てこなくても成立しているという非常に完成度が高いものとなっている。

「エーリヒとテオ」
テオの冒険譚が凄い! 自然の、森の豊かさとか、鳥類の恐ろしさ、主人たるエーリヒとの再会が高い密度で描写されている。テオはリスゆえにまあ鳴き声はあるんだけど言語的セリフというのは無くって、ほぼフキダシはゼロで描写されている。こういうパターンの作品はしばしばあるんだけども、こういうものを面白く魅力的に描けるというのは作家の力量の現れに他ならない。

「歌の翼に乗せて」
ヴィルヘルムとドロテアさんのにゃんにゃんにゃん。2人の出会い、結婚、その後の生活、そしてこれから……みたいな短編。ドロテアさんの恥じらうシーンがたまらなくセクシーである。有り余るほどセクシーである。若さゆえのセクシーさではなく、愛する人間との豊穣なる時間を積み重ねた人間のセクシーさがにじみ出ている。コマから色気がにおってくるよ。ヴィルヘルムさんもある意味においてツンデレというかクールデレなのであるな。

「友情」
ハキムとテニスをしようの会。いやあ、友情だよね。大人の友情の成り立ちの原点のようなものを感じた。言葉が通じなくても、意志が通じれば人と人は交流出来る。ハキムも本編終盤ではかなりいいところをかっさらっていった感もあり、印象深いキャラクターです。

「ふたりでお買いもの」
ポリーとアルマーのショッピング話。どうしてかはわからないけど、皆から受け取った小銭入りの封筒が強く印象に残った。いや、ほんとになんてことない1コマなんだけども。なぜだろう……。森薫さんは多数のキャラクターを配置して動かすのが、本当にうまいなあと思う。

「三人の歌手」
愛する女の気持ちを知り、自らの気持ちを抑える男の涙の物語。ある意味普遍的なテーマであり、現代にも通じるものが多々あるよなこれは。最近のマンガやアニメには、こういう人間関係を主題に描いた作品っていうのはあるのかな。描き甲斐がある設定だと思うんだけども。

いやあ、良かった。良くできた1冊です。B+