The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day 乙一 荒木飛呂彦

The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day
The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day乙一 荒木飛呂彦

集英社 2007-11-26
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ユリイカ 2007年11月臨時増刊号 総特集=荒木飛呂彦?鋼鉄の魂は走りつづける 死刑執行中脱獄進行中―荒木飛呂彦短編集 (SCオールマン愛蔵版) ジョジョの奇妙な冒険〈2〉 (ジャンプ・ジェイ・ブックス) ジョジョの奇妙な冒険 (ジャンプジェイブックス) STEEL BALL RUN vol.14―ジョジョの奇妙な冒険Part7 (14) (ジャンプコミックス)

出版社 / 著者からの内容紹介
ジョジョ』シリーズ第4部・杜王町を舞台に起こったもうひとつの事件。構想・執筆2000日以上、鬼才・乙一が渾身のノベライズ!!

乙一によるジョジョノベライズ。原作本編のようなひっくり返るような展開や異常なほど高まるクライマックスへのテンションのような熱気は感じなかったが、作者がジョジョを愛してやまず、ジョジョの名に負けぬよう恥じぬよう精一杯力強く執筆したであろう熱量は十分伺える。4部に出てきたあのキャラクターやあのアイテムが、再びジョジョ世界で活き活きと動いている。それはとても嬉しい事だった。語り部としての康一君は実にハマリ役というか4部においては彼しかいないよなあやっぱり。

しかし僕もジョジョが大変好きなので、どういうスタンスで読むのかというのがある意味難しい。「乙一の小説」として読むのか「ジョジョの奇妙な冒険」として読むのか。どっちにより重きを置くべきなのか。これはもう読者各自の問題なのだけど、原作、というか舞台をジョジョ世界に持ってきている物語である異常、僕としては乙一の小説というよりも、ジョジョの奇妙な冒険として読んだ。

で、それを前提とすると、荒木ジョジョとは異なるなあという部分が色々あり、一度気にしてしまうと最後までとても気になってしまう。作中人物がフィクション内のキャラクターである事を認識してしまっていたり、読後感の妙な後味の悪さが「らしくない」と思えてしまう。ジョジョのテーマである「人間賛歌」があまり感じられなかったのは本当に残念(最後の最後でなんとか詰め込めたかな……? という程度)。

そして敵に同情すべきところがありすぎて、倒す事にカタルシスが感じられにくい。もともと敵側の視点でストーリーが進行していく構成なので、どうしてもそっちに感情移入してしまうのは仕方がないか。ジョジョには「命がけで何かを為す」というキャラクターが多数いるが、本作のラスボスも、少なからず同情・共感を得る「為すべき事」があった。そのあたりがたとえば本編の「重ちー」に感じた熱さとちょっと違うんだよなあ。しかし全キャラクターに力強い「意志」は感じられたので、そのあたりは流石の熱量! といったところ。絵で表現された原作と同様の圧倒的説得力を求めるのは酷であろうか。

バトルとしては、億泰VSボス戦が非常にドキドキした。二転三転する状況、有利だった側が一瞬の間に不利になる。スタンド能力を互いに推測して闘う。このあたり、バトルとしてのジョジョは見事に再現されているなあと思う。仗助VSボス戦も、バトルのプロセスに説得力があり、原作で消化されなかった「あのエピソード」がキーになっているところは良い。あと、ビルの隙間で生活する女性の描写は荒木ムードもあり、乙一ムードもあり、マッチしていた。

作中でも言及されていたが、このノベライズ、めっちゃくちゃ完成度の高い、非常に面白い同人誌、という位置づけになるかも。ジョジョファンなら一読の価値はあるかな。個人的には、同じくジョジョを敬愛している西尾維新ジョジョをノベライズしてもらいたい。B+