神の左手悪魔の右手 楳図かずお 全4巻(文庫版)
神の左手悪魔の右手 (1) (小学館文庫) | |
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ガリガリガリクソンじゃないけど「おおコワ!」という作品だった。かずお先生の恐怖創造力とそれを伝える情念が凄まじい。ムチャクチャ怖いわこれ。
昔昔、とある小児科で有名な病院で楳図かずお作品が置いてあって、子供の頃の僕は何気なく手にとって読んだらその夜は眠れなくなってしまったくらい子供には恐ろしい。はっきりってホラーマンガを子供がたくさんくる病院に置くってどうなんだというのもあるが、それはさておきホラーにおける「怖い」っていうのは「未知への不安」と「死への恐れ(畏れ)」が一番大きいと思うんだけど、その両方の濃度が異常に濃い。
この作品では、病院で手術した女の子が悪霊みたいなのに取り付かれて、口からハサミ出して人を殺しまくったりする描写もあって、いよいよ病院に置いてはいけないコミックだと思った。子供がこれ読んだら絶対病院自体がトラウマ体験になるんじゃないのかと。
お化けとか悪霊とか科学的に考えると変なんだけど、楳図先生の尋常成らざる恐怖描写力によって、ほんとにあろうがなかろうがとにかくこの絵だけはマジで怖いっていう悪魔的説得力・迫力を持って読者に迫ってくる。派手な音と演出で恐怖心を煽る凡百のホラー映画より、楳図かずおの描くインクの染みのほうが1万倍怖い。人体と異次元が繋がってたり、消しゴムが守護霊になってたりと理不尽に恐ろしいく破天荒極まりないストーリーで論理的整合性はおかしいと思うけど、マンガとしての出来はやはり凄い。夏に読むべき1作。「楳図かずお力」が大爆発を起こしている作品であります。実に20年前の作品で、時事風俗描写は確かに古いけど、人の心に住まう「恐怖」という感情は不変であり全く古びていない。この夏は楳図絵で「ギャ〜〜!!!!」だ! A-