100億稼ぐ超メール術 1日5000通メールを処理する私のデジタル仕事術 堀江貴文

ウェブツール、特に電子メールをいかにビジネスツールとして使うか、という点に特化した情報処理技術指南書。個人環境(SOHO)から企業まで、かなり幅広く使えるノウハウが多いと思った。日報に個々人のやってる業務をジョブコード(何桁かの数字)として普遍化させ、それぞれのジョブコードに費やした時間を元に業務の原価計算に使う(ジョブコードから計算された総労働時間×その人の給料の時間あたりコスト=そのジョブに使われたその人の総コスト)ことや、メーリングリストを社内で多数作成して(ライブドア内では1000以上のメーリングリストがあるそうだ)、情報の共有および業務のスピード化・透明化・フラット化を図るというのは非常にいい発想だと思った(例えばメールで敬語禁止というのは、スピードを考えれば納得いった)。ただこういうのはウェブをある程度使っている人には受け入れやすいんだろうけど、大企業になると年配の人でパソコンとかメールをあんまり使っていない人だと導入しにくいと思われる。でもまあ今の大学生以上ならこれくらいはイケそうかしら。

自分の学部生時代にもこれくらいツールを使いこなせていたら、もっとゼミを充実させることができたかもしれないなーと思った。まあ僕が学部生だった頃は、まだADSLが浸透しきるちょっと前くらいのギリギリの過渡期だったので、ある程度の限界はあったけどね。今ならブログとかオンラインストレージサービスとかWikiとかを駆使して、情報交換のスピード化を図れると思う。

他にも有益だと思ったノウハウをメモ的にクリップしておく。このあたりも基本に忠実であり、別に奇をてらったものはないところが流石だなあと。各章の最後には見開きでその章のまとめが書かれてあるので、忙しい人はそれを読むだけでも有益かもしれません。あるいはコピーして手帳にはさんでおくとか。

・要件は単刀直入に。儀礼的挨拶は無駄
・メールでのケンカは当事者を直接会わせる
・長文メールは早めになおさせる
・返信メールはすぐ書く
・指示は具体的かつ箇条書き
・職務ごとのMLと、案件ごとのML作成
・案件スタートのキックオフミーティングはちゃんと人に会う
・会議は会議前までにいかにMLでつめておくかがカギ
・議事録はすぐ作り流す
・顧客とのMLを作り情報共有・日程調整を楽に進める
・メールの欠点は時間の共有ができないこと、それを補うためにはインスタントメッセンジャーも有効
・携帯電話などに転送させる緊急対応ML
・社内MLで顧客の悪口を書かない
・受信メールの処理でのポイントは、スパム・迷惑メールフィルタ+受信BOXのフィルタリング(件名や内容で分類)→受信BOXがToDoリストに。
・キーボードのショートカット機能を使いこなせ
・パソコンは1台でメールを一元管理
・10秒で返信できるメールはさっさと返信する
・社内向けメールマガジンで情報発信=会社独自の情報フィルタリングになる
・スケジューラーもネットでなるべく完結

本の後半はパソコンとメールソフトの使い方になっているのだけど、ショートカットの使い方については図や写真も多様されていて非常にわかりやすかった。そこらのパソコン雑誌よりもわかりやすく実践的だと思うのでこれは取り入れてガンガン使っていきたい。Ctrlキーーがポイントですな。堀江氏は情報をノートパソコン(VAIOだった)1台で一元管理しているというのはちょっと新鮮だった。シンプルこそが極意なのかもしれない。いやあ、いい刺激になった。あと、メール5000件の処理というのは、実質的にはスパム等で2割、読むだけ、すぐ返信するものが多数なようで、一定時間費やして処理するのは実質100通無いような印象でありました。A

こんな人にオススメかも
・メールを使った業務の効率化を考えている人
・デジタル仕事術というネーミングにエヘヘウフフとなる人
・MLをうまく活かしたい人

堀江貴文のカンタン!儲かる会社のつくり方 堀江貴文

起業して10年持たない会社って非常に多いので「カンタン!」というのは怖いネーミングだなと思った。とまあそれはさておき、この本の内容はまさに「堀江貴文による、ライブドアという会社の」「作り方と育て方と上場の仕方」であった。参考になるところは多いし面白いんだけど、かなり個人的体験がベースになっている以上、読み物的要素もかなり大きいかなという印象。オンザエッヂ時代からエッジ時代、そしてライブドアへ。堀江氏自身による起業時のオンザエッジ事業計画案、事業計画書が冒頭と巻末についてるので興味のある人は面白いかもしれません。かなりライブ感はあります。ビジネスプラン、資金調達、営業、給料の決め方、キャッシュフロー、会社の宣伝方法、増資、内紛、ベンチャーキャピタル、証券会社との付き合い、上場準備などについて、自身の経験をかなり細かく書いている。オンザエッジ時代の恋人についてや、妻と子についても言及されているところは他の本にはほとんどなかったので目を引いた。あと、先日謎の死を遂げたエイチ・エス証券副社長野口英昭さんや、先日逮捕された右腕、宮内亮治さんの名前も出てくる。特に宮内さんはオンザエッジ時代に税理顧問をしており上場のアドバイスもしているので、かなりの頻度で名前が出てくる。
第4章はライブドア関係者(社員や買収された会社の社長)のコメントが多数あり。ストックオプションを現金化して数億円になった社員もいるそうでそれは凄いなーと。
わりとこう、「ライブドア史」的な1冊。B+

100億稼ぐ仕事術 堀江貴文

この人のタスク処理については前からかなり興味を持っていた。どんな風に処理しているのか? 参考になるところがあるといいなと思い、読んでみた次第である。項目がくっきり分かれていて文章も読みやすく、1時間ちょっとで読めた。

結論から言うと、予想以上にシンプルであり、基本に忠実に、ということが印象深かった。なんら特殊なことはしていない。メールによる情報管理には工夫が見られるが、それとて「斬新」とか「思ってもみなかったコロンブスの卵」という類のものではない(ただ、日報メールを原価計算に使う、というのは非常に感心した)。本当に、基本を大事にしているのだなあということが分かったのは収穫であった。そしてその基本に対する集中力、実行力が並外れているのだと。あと、ちゃんとノミニケーションも推奨しているところが面白かったな。

「現在の制度において、利益を最大化するために何が必要か」という観点から逆算した結果、非常にシンプルかつ合理的である行為が、基本的なこと、だったのだろうと思う。会社は株主のものである、というゴールから出発して、そのための利益の最大化、そのためには稼がないといけない、そのためにはいい商品を作らないといけない、という「逆からの思考」がシンプルかつスピーディーだ。

基本、と簡単に言うのも良くないと思うので具体例を記す。例えば、といっても多面的なので色々メモ代わりに書いておくと、デキる営業マンと知り合え、名刺に工夫する、名刺をデジタル化する、社内でメーリングリストを多く作成して、情報の共有・透明化を図る、相見積もりをとって無駄なお金を使わない、メルマガをたくさん購読して多くの情報を得る、メールの処理は分類とフィルタ分け、ウィルス対策も忘れずに、読み方はキーボードのショートカット機能をうまく使おう、休むときはしっかり休む、徹夜はすすめない、などがある。逆に言うと、基本に忠実でない企業、というのが日本にはめちゃくちゃ多いのだろうなーと思った。マスコミで言われるようなキャラの印象とは全く異なる地に足着いた方法論は、一回転して実にためになる、という感じですなあ。添付ファイルはウィルスの可能性もあるからむやみに開くな、なんてビジネス書で口をすっぱくして書いてくれる社長はこの人くらいでしょう(堀江自身もI love youウィルスに感染したことがある、と告白している)。これらの地道な積み重ねが100億という売り上げなのだろう。

なお、メール処理については、「100億稼ぐ超メール術」を今度読もうと思っているところであります。1日5000通というのは、大半の迷惑メールをスパムフィルタで処理しているので、メールを読んで実際に何かして処理している実数はもっと少なく見積もらなければならない。

時間を創り出し、思考時間を増やし、利益をあげる。これは仕事に限らず、勉強や一般的な生活にも十分応用できそうだ。なかなかにいい本です。A

追記
逆に言うと、というかこの本に足りていないところは、書かれているノウハウを実行、実現するためにはどうすればよいか? という、ある程度誰にでもできるようにするための「メンタル」の持って行き方が書かれていないところである。まあ、それは書かれていないのも当然なんだけどさ(合理的に考えたらそうしたほうがいいに決まってるから、というスタンスだからだろう)。しかしなんだかんだいってこの人は物凄い集中力と実行力を持っているのであって、だからこそこういう基本を全部出来たとも言えるし、世の中の大半の人はそういうメンタリティが無いんだからね(早寝早起きでさえ出来ていない人は、僕を含めて数多いだろう)。なので、ある意味メンタルトレーニング的なノウハウ本があと1冊フォローされていれば実用性はさらに増すだろうと思う。ただ読むだけでは単に「ホリエモンすげえな」で終わりかねない要素はあるし、そのあたりを意識しないといけないかもしれない。

こんな人にオススメかも
・色々と方法論に行き詰まりを感じている
・基本に立ち返りたい(年度末だしね)
堀江貴文という人間をもうちょっと詳しく知りたい

儲け方入門〜100億稼ぐ思考法

儲け方入門〜100億稼ぐ思考法

儲け方入門〜100億稼ぐ思考法

こちらは番外編的な1冊。見開き2ページで800字程度にまとめられたコラムが45本、そして浅草キッドとの対談が70ページ程度という分量で、1時間くらいで読了できた。堀江氏の視点と価値観の呈示、という感じの本であります。この中でけっこう再三に渡って「面倒くさいことはしない」「しがらみをつくらない」というようなことを言っている。また、全体を通じても、うそをつくとそのうそを取り繕うために色々しないといけなくなるからそういうのは面倒だからしない、ということも述べている。上の本と同じく、地道な商売をするという点においてはこれも非常にベーシックなことを書いているので(原価が低くて利益率が高いものをしろ、とか)、儲け方入門かつ堀江貴文入門的な1冊ですな。キャッシュフローは大事とか、ファイナンスの知識がないと損するとか、そりゃそうだなあという問題意識も多々。かなり軽めの堀江本でした。B

堀江貴文まとめ

以上4冊読んだわけだが、突然ここで仏教的見地から堀江貴文という人間を考えてみる。まあ僕の仏教の教義に対する理解は高校の倫理の授業レベルで止まっているので話半分で聞いてもらえればいいんだけど、えーと大乗仏教小乗仏教という観点から。僕の理解では、大乗仏教が「おっきなバスを運転して、皆を極楽につれていく」というもので、小乗仏教が「一人で車を運転して、もしくはバイクや自転車で、極楽にいく」というものだ。悟りを開く必要があるのが誰か、という点で両者は異なる。大乗なら代表1人が悟って頑張ればいいし、小乗は個々人が頑張らないといけない。どっちが人気ありそうか。そりゃ、自分で必ずしも頑張らなくても良い大乗仏教ですわな。僧侶が頑張ればいい。僧侶にお布施とかなんかいろいろあげる代わりに、自分は世俗に生活してお金を稼ぐし、僧侶に頑張ってもらう。それでまあ、死後ヨロシクと。小乗は大変だ。皆自力で頑張んなきゃいかんからね。で、堀江氏というのは、カネに関してかなり小乗的な要素が強いと感じた次第。社員に要求するレベルも高いしその代わりにできた人には高給が支払われる。けっこうこれは小乗的だね。一方株主・市場に対しては大乗的要素が強いかなと。投資してくれ、頑張るから! という。これまでの大企業は社内に対しても大乗的要素が大きかったんじゃなかろうか。社員には精神的時間的コストを支払わせて、会社は年功序列終身雇用的体系でもって極楽へ導く、と。しかし近年アメリカ化する日本資本主義社会で、どうも日本的大乗会社は社員を極楽に導けなくなったものが出てきたと。立派な僧侶だと思ってたものが、実はエセだったと。そこで新興のIT系起業なんかは結果として逆ハリになったというか、小乗でいってみようかという感覚がけっこう感じられる。堀江氏のテーゼというのは「皆起業すればいいじゃん」なのでこういうのはまさに小乗仏教のススメって感じなんだよなあ。