世界は密室でできている。 舞城王太郎

世界は密室でできている。 (講談社ノベルス)

世界は密室でできている。 (講談社ノベルス)

しばらくぶりに舞城作品。装丁は文庫版より単行本版のほうがいいと思った。12歳〜19歳までの月日と、その間に起こる複数の密室に関する事件。名探偵「ルンババ12」と「僕」、そして「エノキ」が事件に向かう。
複数の事件がテンポよく絡み合うところはうまいなあと思う。舞城文学というのか、この疾走感はすごいね。本作は他の舞城作品よりも、色んな点で「わかりやす」かった。伏線もわかりやすいし、主人公ら登場人物の行動原理も輪郭がくっきりとしている。もちろん「なんで?」というわけわからん感じの部分もあるにはあるけど、少なくとも相対的に他の舞城作品(例えば「暗闇の中で子供」)よりはわかりやすいお話だったなあと思う。ページ数とわかりやすさ加減のバランスがいい。舞城作品独特の頭グラグラ感とか精神グニョグニョ感は少ないけど、あーこういうのもキッチリ書けるんだーさすがだーという気分。ミステリー、だけどいわゆる古典的ミステリーではないねーこれ。この人の文学に、ミステリーという要素がちょっと入ってる、という具合か。
そして登場人物がちゃんとそれぞれの年月の間に、彼らなりに成長しているところも良いですなあ。B+