銭 4巻 鈴木みそ

銭 四巻

銭 四巻

銭、第4巻。様々な業界のカラクリ、「ゼニ事情」をルポしつつちゃんと人情の味わいのあるストーリーに仕立てる鈴木みその力量は確かだ。
4巻ではペット業者、ブリーダー関係の業界事情、声優の世界、古物商売絡みのゼニ事情を面白く描いている。世の中どの業界も業界特有の色々なことがあって、現場の人たちはそれぞれ必死で大変だ。主人公たちが幽霊という第三者的立場にいるのが、物語を絶妙なバランスにしているのだと思う。幽霊なのに(幽霊だから?)現実に色々影響を与え、ゆるやかにしかしときに大きく物語に関与する。
絵は『おとなのしくみ』からけっこう変わってきたなあという印象。コンピューターを使って作画している人というのは、コンピューター技術の発達によってもちょっとずつ変わっていくものなのかな。個人的には『アジアを喰う』の頃の絵が好きだ。美少女がかなり美少女で、オタクがかなりオタクに描かれるというある種のデフォルメも、昔よりけっこう拍車がかかっているなあと思った。ここの声優編に出てくる声優の女の子は、美人ではない。そして体を張ってでかい役をゲットする、かわいい声優の子も出てくる。この2人のビジュアルの差は確かにあって、それを丁寧に描いている。メインの女の子は目や鼻やヘアースタイルが、美人の記号的なそれと異なるコードで描かれている。
ペット業者編は人情テイストがかなり強くて、あんまりお金お金していなかったな。声優は声優事情がけっこうわかって面白かった。古物商編はまだプロローグが終わって少ししたところだ。5巻も楽しみだ。B+