きみとぼくの壊れた世界 西尾維新

きみとぼくの壊れた世界 (講談社ノベルス)

きみとぼくの壊れた世界 (講談社ノベルス)

西尾作品を読むのはこれがはじめてである。んー、全体的にものすごくキャラが立ちまくってる物語だったなあ。主人公、櫃内様刻と彼の妹の櫃内夜月。この2人の兄妹の禁忌的な「恋愛」。主人公の友人である迎槻箱彦との「友情」、そして主人公と琴原りりすとの「恋愛」。人格が色々とぶっ飛んでいる巨乳の持ち主、病院坂黒猫(すごい名前)。主人公と病院坂との「恋愛」。櫃内夜月の「〜にゃー」「……かなー」という口癖は現実にいたら心底うっとおしいだろうなと思いつつ読み進める。病院坂の一人称単数形「僕」も、昔クラスにいたいわゆる「ボク女」を連想させるものだったがまあそれは別にいいとして。兄妹の壊れそうな恋愛に対して、主人公達の両親は、作中ほとんど不在であり、関与していない。このあたり、個人的には少々納得しがたいながらも、うまいこと構造を作ってるなあと思います。そんなこんなで、犯人や犯行動機に「ええー!」と思いつつ(この「ええー!」は「びっくりした!」と「ちょっと、んなアホな!」という気分が半々くらいに混ざり合ってます)最後まで読むと、タイトルが実にうまいネーミングだと感じた。まあ主人公と周囲の人間に関する諸問題はほとんど解決していないまま終わってるからというのもあるんだけど……これって続編に続いたりするのかなあ。どうだろう。病院坂さんのぶっ飛び具合はなかなか魅力的だったので、この人の饒舌はまた味わいたい。

あと、いわゆる「後期クイーン問題」について作中でうまいこと解説してあったので、今までその言葉は知ってたけど意味する内容を理解していなかった僕にとってはなかなか参考になった。この本の謎解き部分は、いわゆる名探偵コナン的なトリック暴きとかではなく、「ロジック」を詰めていく事で犯人を推理していくものだった。この方法も僕は今まで読んだことがないものだったので、新鮮だった。

さて、舞城と西尾の比較というかイメージなんだけど、僕のイメージで言うと、舞城王太郎は読者に180キロとか200キロくらいの豪速球を、高めや低めや真っ直ぐに思いっきり投げてくるピッチャーであるのに対し、西尾維新はそもそもが魔球というか分裂魔球とか消える魔球とかそういうボールを怪しげな挙動で投げてくるピッチャーである。いずれにせよ、普通のバッター(=読者)は「うひょー」といいながらボールを見送るしかないのであろう。たまに思いっきり振れども空振り、みたいな。A−