壊れかた指南 筒井康隆

壊れかた指南

壊れかた指南

2006年4月発売。筒井御大の狂気の短編集。近年の長編は感動的なものが多かった筒井作品だけど、この短編集はかなりドシャメシャな部分があり、ニヤニヤしたりバフっと噴き出したりの悲喜劇がたくさん充実していた。ある人の顔を思い浮かべるとウンコが出やすくなる、という『便意を催す顔』や、ウンコが出続けて北極までいってしまう(ウンコの勢いで)『便秘の夢』など下品エンターテイメントも流石の出来栄え。他にも、おれおれ詐欺をぶっ殺してやるという意思を感じる『取りに来い』、1分ごとに人格が鬼と仏のように間逆に入れ替わる病気の人間を描いた『鬼仏交替』など、クルイっぷりんのハンパ無さに大満足した。ウンコ凄いなあ。
ラストの3作品は赴き深い味わいの作品で、これまた印象に残った。古典読書啓蒙にして読書家の夢のような暮らしを描いた『耽読者の家』、長年続いたレストランが閉店してしまう侘しさ、ほろ苦さを描いた『店じまい』、世話焼きの老女とその息子の悲しい性が苦い『逃げ道』。胸がぎゅっとなる。
筒井康隆のギャグパワー、未だ健在也を確認することができて本当に嬉しい。B+