レミーのおいしいレストラン ピクサー作品

レミーのおいしいレストラン

レミーのおいしいレストラン

ネズミがコックのレストラン! レミー達はディフォルメしながらもややリアルなネズミキャラの造型なのに、見事に愛らしさを獲得したキャラクターになっている。このネズミの造型がミッキーマウスみたいなのだったらまた色々と感じるところもきっと違ったのであろうなあ。

自国語をことのほか愛するフランスしかもパリという舞台なのに喋る言語は英語、というのはかすかに引っかかるところだけど、疑問に思うのはそこくらいで、あとは『カーズ』同様、全てこれまたハイレベルなエンターテイメント作品だなあというところ。『Mr.インクレディブル』の監督と同じ人が監督だそうだけど、本作のほうが好みかな。

レストランを舞台にした作品でダントツに好きなのは『王様のレストラン』だけど、この映画も負けず劣らず素晴らしい。90分という尺はデートムービー、ファミリー鑑賞にも最適。

しかし相変わらずピクサーは「ほぼ」王道を走るなあ。フィーリングの話になってしまうけど、スタジオジブリは良くも悪くも宮崎駿という人間の持つパワーが強すぎて、強い個性が作品に反映されている。とりわけ近年の数作品は色濃く繁栄されているように感じて、筋の複雑さ(というより説明不足による「訳のわからなさ」というほうがいいのだろうか)が目立つ。ただあれも、観たら観たで感覚的に何となくわかったような感性を有する日本人のお客さんもやっぱり凄いと思う。で、まあもののけ姫とか千と千尋とかハウルとか、観たあと妙に疲れるわけです。その後「あれはどういう意味だったんだろう、何だったんだろう」ということをあれこれ語る楽しみというのもあるわけですが、2時間楽しく鑑賞して終わったあと気分切り替えて次の何かをする、というにはあんまり向かない雰囲気が漂っているという印象があります。1人の天才クリエイターが作った世界で遊んだり迷ったりする、という鑑賞。

ピクサーはその点、ストーリーの真っ直ぐさ、勧善懲悪加減、人物造型のゆるやかなシンプルさは非常に明確です(毒は毒でたまにあるんだけど)。90分を100パーセント楽しむ、ということに全力を尽くせる。このあたり、昔のジブリ作品は解釈の多様性を持ちながらも「話を追いかけるのに必死」というしんどさは無くて、お話を楽しめたんだけどなあ。宮崎駿は「これでついてこれるなら、これはどうだ?」みたいなことを10年以上かけてやったような気がする。ピクサーの挑戦はお客さんに対するものもあるんだろうけど、それよりももっとこう、作家性を発揮した自意識をどこまで抑えて最大多数の最大幸福を追求するか、みたいなところがあるように見えるなあ。A-