「勝つ事」もそして「負ける事」すらいつだって そうは簡単に決まっちゃくれないもんなんだ 3月のライオン 8巻 羽海野チカ
3月のライオン 8 (ジェッツコミックス) | |
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マンガは心を揺さぶり、今日を生きる、明日を生きるエネルギーになる。
3月のライオンはまさにそういう作品だと思う。
8巻もまた多数のキャラクターの心の揺れ動きや激しいエネルギーに圧倒された。
桐山VS宗谷名人戦に観る次元の異なる言語外のやりとりは、零がこれから先たどり着くであろう、最後の扉を少し開いたのではないか。
そしていじめに遭い学校から去ることを余儀なくされた「ちほちゃん」のその後も描かれる。少しずつでも前向きになろうとしているちほちゃんを描いているのは嬉しいというかなんというか、やっぱり作者は全ての登場人物を幸せにしようとしているのだなと感じた。同様の作品姿勢は辻村深月の様々な作品や河原和音「青空エール」などにも見られ、僕はこういう作品が大好きだ。
そしてクライマックスとなる柳原朔太郎VS島田戦。
この一局においては「色々思いや考えを巡らして語るほうが負ける」といういわゆる美味しんぼ的メソッドは崩れ、追い詰められて追い詰められてそれでも前に進もうとした者が勝利する。勝利の先に待っているものは「さらに厳しい戦い」であったりするわけだが、戦士はわずかな休息の後、再び戦いに赴くだろう。
後ろ向きな考えをもちがちな自分にとって、大きなエール、エネルギーになる1冊だった。9巻は誰がどこで誰と戦うのだろう。二階堂か、それとも? A-